【東京防災ってどうよ22】ここがダメなんだよ【18】(#1248)
『東京防災』にツッコむ、大台も間近の18回目、今回は、これ絶対におかしいだろという話。
医療関係者の方のご見解を伺いたいところです。
【182ページ】やけどの応急手当
【軽いやけどは水で冷やす】
面積が身体の10%未満(傷病者の片手の手のひらの面積が体表面積の1%)のやけどなら、できるだけ早く痛みがなくなるまで15分以上きれいな水で冷やします。
これは、その通りなのです。
ちなみに、やけどを水で冷やすのは、放置すると皮膚の奥まで熱が浸透して組織が破壊され続けるので、なるべく早く温度を下げて、熱の浸透を止める必要があるからです。
で、問題は【詳細→262ページ】とある、その先。
【重度のやけどの処置】
やけどした部分を衣類の上から水で冷やし、患部に刺激を与えないように、タオルケットやバスタオルなど、十分な厚さのある清潔な衣類で包みます。その後、できるだけ早く医師の治療を受けます。
これ、どう考えてもおかしい処置ではないかと。
まず、重度のやけどとは表皮が熱で壊死したり(3度)、黒こげになって脱落する(4度と呼ばれることもある)状態ということでしょう。
その状態では、表皮の下の真皮がむき出しになることもあり、血液や体液が浸出します。言わば、“赤むけでぐちゅぐちゅ”という状態。
ですから、そのまま衣類を脱がせると、衣類にくっついた表皮が剥がれたり、むき出しの真皮を傷つけることがあるから、それを軽減するために、まず『衣類の上から水で冷やす』ことが必要なはず。
なお、衣類を脱がす時は、切り裂いて丁寧にはぎ取らなければなりません。皮膚とこすれるような脱がせ方をすると、状態が悪化します。
それなのに。
見えない敵が怖い
人体は、皮膚(表皮)で包まれているので、外部からの刺激や感染に対抗できます。
重度のやけどで、その“人体の防護服”である表皮が壊死したり剥がれてしまったりした状態で最も必要なことは、感染からの防護であると、管理人は認識しております。
重度のやけど患部は、簡単に空気感染して、化膿してしまうのです。
ですから、その場合の最優先の処置は、できるだけ清潔なビニール袋など空気を遮断できるもので、患部を覆うことだと考えております。
患部を覆うものとしては、ポリラップやアルミレスキューシートも適しています。
患部は水で冷やしながら洗うだけで、アルコールなどで消毒してはいけませんが、可能ならば患部を覆うビニールなどを、アルコールで殺菌するのは良いでしょう。
過去には、火災で全身に大やけどを負った幼児を、居合わせた人がすぐ水で冷やした後に大きなビニールゴミ袋で包んだために感染が起きず、予後が良かったというニュースを見たこともあります。
そのニュースでは、すぐにビニール袋で全身を包んだ人の的確な行動を、救急隊員が賞賛していました。
そしてもうひとつのメリット
重度のやけどの患部をビニールやポリラップ、アルミレスキューシートなどで覆うのは、もうひとつ大きな理由があります。
それは貼り付かないこと。
管理人が最も指摘したいのは、そこです。しかし、記事では、『タオルケットやバスタオルなど、十分な厚さのある清潔な衣類で包みます』となっています。
十分な厚さのある、というのは、空気を通しにくくて感染がおきづらいことと、浸出する体液を吸収する、という理由でしょうか。
でも、考えてみてください。じゅくじゅくべたべたした患部に、繊維を“貼り付ける”こと。
体液の浸出が減って患部が乾いてきたり、体液を吸い込んだ繊維が乾いたら、どうなりますか?
傷と一体化して固まってしまうのです。それをはがすとき、どうなるでしょうか。
これはやけどだけでなく、他のひどい外傷でも一緒。患部を繊維で直接覆ったままにしておくと、傷と一体化して固まり、剥がせなくなってしまうことがあるのです。
ましてや災害下、すぐに病院で治療を受けられるとは限りません。なのに、『できるだけ早く医師の治療を受けます』と、それができる前提なのでしょうか。
もっとも、すぐに治療を受けられる場合でも、まずはビニールなどで空気感染防止と、管理人は認識していますが。
もし繊維を巻かなければならない場合でも、患部に貼り付きづらいさらし木綿や手ぬぐいなどであり、『タオルケットやバスタオル』とは考えられません。それも、患部に貼り付かないように、ゆったりと余裕を持たせて巻くと認識しています。
なお、体液を吸収しないビニールなどで包む場合、ビニールなどを巻いた部分の上や横にタオルなどを巻いて、浸出する体液を吸い取れば良いと考えています。
ぜひプロのご見解を
この記事、監修したのは医師などプロのはず。もし『防災の専門家』とか医療の素人だったら大問題ですよ。
しかし、特に災害下の救急医療という観点からは、上記のように大きな疑問があります。
災害下の処置として『東京防災』の記事が正しく、管理人が根本的に間違えているのか、それとも『東京防災』ともあろうものが、致命的な誤りを犯しているのか(これだけじゃないけどw)
ぜひそれをはっきりさせたいので、ぜひ医師や救急救命に関わる方など、プロの方のご見解を伺えればと思っております。
よろしくお願いいたします。
コメントを頂戴できなかった場合は、知恵袋ででも訊いてみますw
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はじめまして。
いつも参考にさせていただいています。
以前、防災グッズの1つとして最小の救急セットを組もうと調べていて見つけました。
擦過傷やヤケドなど、傷は消毒してはいけない、乾かしてもいけない、
と言う治療方法です。
以下を参考にしてください。
湿潤治療
http://www.moistcare.org/moistcare.html
また、こちらも参考に、と言うよりこちらが本家ですが。
http://www.wound-treatment.jp/
では。
投稿: y | 2016年9月 1日 (木) 07時35分
上のコメントが最強。ありがとうございます。
投稿: | 2016年9月 1日 (木) 11時30分
>y様
コメントありがとうございます。大変参考になります。
正直申しますと、私は個人的に当ブログ読者のドクターからご指導いただきまして、外傷ややけどに関しては湿潤療法を採り入れております。
ブログには書いていないのですが、個人装備にはプラスモイストやワセリンなど、湿潤療法の資材を備えております。
記事中、患部をポリラップで包むなどと書いているのも、その流れというわけです。
湿潤療法では患部は消毒してはいけないということで、記事にもそう書きましたが、ビニールなどで覆う際には、ポリラップなど滅菌したものでなければ、わずかでも細菌の付着が問題というご指摘もいただきましたので、ビニールなどの方を消毒すると良いと書いたわけです。
しかし、湿潤療法を素人が薦めるのは荷が重いというか、間違いがあってはいけないということで、ブログでは採り上げておりません。
また、ご指導いただいたドクターからも、断片的な紹介はしない方が良いとのご意見もありました。
そんなわけで、湿潤療法の観点からも、空気感染防止と繊維の固着防止ということからも、『東京防災』の記述には問題があると考え、このような記事になったわけです。
なお、湿潤療法はまだ一般化してはいない療法ではありますが、旧来の処置としても、通気性の低い厚手の繊維類で覆うというのは理解できなかったのです。
つまるところ、代用資材しか無い災害現場で、やけどをどう処置するか。ビニールなのかタオルケットなのか。それを明らかにしたいと考えているわけです。
引き続き、専門家の方のご見解をお待ちしたいと思います。
投稿: てば | 2016年9月 1日 (木) 16時18分
>9/1のコメント主様
上の方へのリプの通りと言うわけでございます。やはり、ビニールやラップで覆いたいなと。
投稿: てば | 2016年9月 1日 (木) 16時21分
てば様
ありゃ、そういう事でしたか。(^^;
せっかく気を使われていたのに・・・。
なんだか余計な情報を入れてしまったようで、申し訳ないです。
おっしゃる通り、中途半端な情報を素人が勧めるのは問題がありますね。
ただ、「こう言う選択肢もあるよ」って情報を伝えたいとの思いが強かったのです。
しかし、単にラップで覆えば大丈夫などと、間違った事はして欲しくありません。
その辺りは、ご自分で学んで判断して頂くしかないでしょうね。
以下は、素人の私が本家HPで学んで、理解し納得した事です。あくまで私見です。
創感染に関しては、細菌の存在は極端でない限り気にする必要はない。
つまり、細菌は存在しても良い。
それよりも、細菌が増殖する環境を作らない事が重要となる。
湿潤環境で増殖が起こるのは、壊死組織や異物の存在である。
したがって、こまめに傷を洗浄して異物を取り除くことが望ましい。
です。
しかし、被災時に水を豊富に使う事は困難だと予想されるので、悩ましいですね。
ちなみに、プラスモイストに非滅菌タイプがあるのも、細菌は気にしなくて良いよ
って事かと。滅菌タイプは病院に採用され易くするためらしいです。たぶん。(^^;
でも、私が思う湿潤療法の最大の利点は、痛みに対する効果です。
これは、複数個所の擦り傷を負った時に、自分の体で試した事があります。
治りのスピードだけでなく、痛みの程度が格段に違いました。
だから、物資も鎮痛剤もちゃんとした医療も無い状況で、感染か痛み除去か・・・。
うーん、難しいですね。
あっ、私の場合、繊維類はありえません、ビニールとかラップ&ワセリンです。
プロの意見を求めているのに、素人発言ですみません。(^^;
では。
投稿: y | 2016年9月 1日 (木) 19時54分
>y様
すいませんそういうことだったのです。
気を使うというか、素人が湿潤療法のやり方を十分に網羅することはできませんし、仮にできたとしても、正しく伝わらないこともありますから、控えていたというわけで。
やけどは消毒しない、ラップでくるむ、ドレナージを吸い取る、たまにラップ取り替える、くらいの知識だけで済むわけでもありませんし。
でも、プロの処置を受けにくい災害下で、我々素人が自主的に何ができるかが重要です。でも、ブログ程度で一般化できないものも、かなりありますね。
そうなんです。私も「こういう選択肢もあるよ」と、関連サイトのリンクなども考えました。ただ私の場合、閲覧もかなりいただいている関係もありまして、リンクなどするなら本家の許可を取った方が良いとの、ドクターからのご意見をいただきました。
しかし、この療法は「主流」ではないだけに、いろいろ批判されることも多いようで、掲載許可なども、申請すれば誰でもOKということでも無いそうです。もちろん、良い療法だと思って広めたいのですが、ちょっとハードルが高いことはありますね。
もちろん、皆様がリンクなどされるのは問題ないはずです。ただ、私のとこは防災専門で、それなりに規模があるので、素人とはいえちょっとアレだなとwしかも、素人なのに一部の『専門家』をぶった斬りまくってますからねww
感染に関してですが、確かに新品のビニール袋についている程度の雑菌ならば、無視できるのかなとも思います。コロニーがあるわけでなし。使い回しなら消毒は必須ですね。
プラスモイストに非滅菌があるとは知りませんでしたw滅菌タイプは、いろいろ大人の事情なんですねw
少なくとも私自身は、感染防止の観点からラップがあればそれを巻き、無ければゴミ袋などで患部を覆います。それで、同時に湿潤療法としての痛み止め効果もあるのではないかと考えます。
昔、バイクでコケたひどい擦り傷なども、基本的に乾かしてましたが、確かにえらい痛かったですよw
これからも、ご意見ご感想などいただけましたら幸いです。よろしくお願いします。
投稿: てば | 2016年9月 2日 (金) 09時46分
てば様
丁寧に説明・対応していただき、ありがとうございました。
一つだけ訂正があります。
プラスモイストの「非滅菌」は、正しくは「未滅菌」でした。
まぁ、検索すれば出てくるので問題はないと思うのですが、
情報は正確な方が良いですし。
湿潤療法については、とりたててココで解説するまでもなく、
キーワードの「湿潤療法」さえあれば、すぐに調べられますし。
今時は、そうやって調べた素人の方が、へたな医者より詳しくなってます。
東京防災のほうに集中していただきたいので、コレに返信は不要です。
更なるツッコミが、楽しみです。
投稿: y | 2016年9月 2日 (金) 14時21分
>y様
ご配慮ありがとうございます。ツッコみ、まだまだ続きますので、お楽しみにw
投稿: てば | 2016年9月 3日 (土) 21時17分