『東京防災』にツッコむ通算36回目は、『今できる?防災アクション』の3回目。
前回記事から続いて、食品の備蓄についてです。
【086ページ】最小限備えたいアイテム

さて、『今やろう!防災アクション』の冒頭では、『日常備蓄』(ローリングストック)の勧めがありました。
そこから1枚ページをめくった086ページからは、具体的な備蓄の内容が提示されます。
でもそれは、冒頭で勧めたはずの『日常備蓄』の考え方を自ら否定して行くという、驚くべき内容となっています。
もっとも、そうなっていることに監修者は気づいてもいないのでしょう。なんたって、実践を伴わない机上の空論ですから、問題点も気づかない。
086ページには、備蓄しておくべき最小限の食品類として、下記が提示されています。
■水(飲料水、調理用など)
■主食(レトルトご飯、麺など)
■主菜(缶詰、レトルト食品、冷凍食品)
■缶詰(果物、小豆など)
■野菜ジュース
■加熱せず食べられる物(かまぼこ、チーズなど)
■菓子類(チョコレートなど)
■栄養補助食品
■調味料(しょうゆ、塩など)
これ、ふたつの意味で問題だらけということ、おわかりになりますか?
ダメな理由その1
まず上リスト中で、『日常備蓄』の基本的考え方である、日常の食品類を少し余分に買っておいて、無くなる前に買い足すことで、常時備蓄をキープするという方法が採れるものは?
厳密に言えば、調味料(しょうゆ、塩など)だけじゃないですか?
この時点で、『日常備蓄』はあまり効果が無いと、自ら否定しているようなもの。
それに、普段の食事で、ペットボトル水、レトルト食品、缶詰など、ほとんど使いませんよね。通常の備蓄には適していても、『日常備蓄』には全く適していない。
備蓄した食品類は、賞味・消費期限などを考えて定期的に入れ替えることが必要なわけですが、そのためには、備蓄食品を意識して消費する“防災ディナー”のようなことをしなければなりません。
でも、現実にそんなことをするのは面倒なので、だからこそ『日常備蓄』(ローリングストック)という考え方が出てきた訳ですが、普段の食材と備蓄食品に重なる部分がなければ、ほとんど意味がありません。
章の冒頭でローリングストックを勧めたのならば、後の記事はそれを前提としたものでなければなりませんが、上記のリストは、従来から言われて来た通常の備蓄品ばかり。
自ら、『備蓄食品のローリングストックはできません』と宣言しているようなものですね。
できるのは、せいぜい米と麺類くらい。しかし、それも前記事でも指摘したとおり、十分な水が使えなければ、単独ではほとんど食べられない。
ここで、改めてリストを良く見てください。レトルトご飯はあるものの、『日常備蓄』の中心となるはずの米(無洗米)さえ、実は入っていないという体たらく。
こういう反論もあるかもしれません。通常の備蓄食品も、日常的に少しずつ料理などに使って消費すれば良い、と。でも、そう言うこと言う人の大半は、自分で食事なんか作らない人なんですよね。
普段使わない、それも生鮮品ではない食材を日常の料理に応用するのは、やったことの無い人間が想像するより、はるかに面倒なことなのですよ。そうでしょ?料理やる皆様。
そんな面倒なこと、どうぞやれる人はやってください。そんなのは、備蓄品の量も作業の手間も考えていない机上の空論です。
量の問題として、例えば水のこと。ひとり1日2リットル、家族4人として8リットルの3日分で24リットル、ペットボトル12本。これだけのミネラルウォーター、短期間で使えますか?
ご飯を炊くのに使いますか?なんなら、ミネラルウォーターでお米とぎます?w
ならば、例えば3日で2リットルくらい、お茶でも淹れるのに使いますか。きっとおいしいお茶が飲めるでしょう。でも、そうしたら3日に1本のペースで補充しなければ、備蓄はどんどん減って行きます。
そんなことを、水だけでなく全部の備蓄食品で、いつ来るかわからない災害に備えて常時残量と消費期限を把握しながら、延々と管理し続けられますか?
もちろん、それが苦にならない方もいるでしょう。でも、絶対に多数派ではありません。 というか、そういうことを提唱している人間自体が、絶対にやったこと無いはず。
こういう空虚な”指導”を見ると、家族の食を預かる仕事をナメるな、やったこともないオッサンの机上の空論をエラそうに吹くな!という。あ、これは管理人の怒りねw
ちなみに、女性で防災だの危機管理だのアドバイザーだの名乗る人物でも、こういうこと言うのいますね。
女性が言うと”主婦目線”に見えるけどさにあらず。こいつ家事なんか全然やったこと無いな、てなこと平気で言うのもいる。
当ブログ過去記事にこんなのがあります。女性が食いつきそうな話題を振っておきながら、内容は机上の空論丸出しというw多いんですよ、こういうの。
【呆れました特集】専門家ってなに?【1】
防災備蓄とは、本来おカネも手間も場所も取る、実に面倒なことなんですよ。でもそれを、上っ面のアイデアで「こうすれば簡単!」と、耳当たりの良いこと言う輩が多すぎる。
『日常備蓄』(ローリングストック)は、主な備蓄が整っていることを前提にした、あくまで補助的なものなのです。
こういう”指導”は、言うなれば野球の情報には詳しいけれど、一度もプレーしたこと無い人間が選手の練習法を指導しているような、あり得ない状態ということ。
でも、そんなのがありがたがられて、ヨタ情報でも商売になって、『東京防災』みたいな公式本にも載ってしまい、批判もほとんど起きないというのが、この災害大国の現実ということです。
管理人、孤立無援です(爆笑)いえ、ご愛読いただいている読者の皆様の存在は、常々感じております。ありがとうございます。
こういうやっつけ仕事を撲滅するために、どうぞ拡散してやってください。
ダメな理由その2
では、『日常備蓄』(ローリングストック)はさておいて、『東京防災』が勧める備蓄食品は正しいのか。
例によって、こういうのは概ね正しい。でも、現実に落とし込むと、机上の空論が浮かび上がって来るのです。
それも、ちょっと考えればわかることを、監修者が面倒くさがりなのか頭が悪いのか(たぶん後者w)、考えなしに提示していることが多くて。
当記事冒頭の備蓄食品リストを見られて、ちょっとおかしいと思いませんか?
それを食べることになるのは、インフラ停止下なんですよ。電気も水道も止まった。
例えば、夏には気温が30℃を優に超え、湿度が80%以上などという中で、冷蔵庫が使えないのです。
そんな中で、かまぼこ、チーズ、チョコレート、野菜ジュース?
もちろん、対応できる製品はあります。滅菌して個別包装されたものならば、常温保存もある程度は大丈夫でしょう。でも、高温で変質するものもある。
野菜ジュースなど飲料類にしても、1ポーション分の個別パックならば問題ありません。でも、ペットボトル飲料も含めて、開封後要冷蔵のものはダメ。
チョコレートがドロドロになるのも避けようがありませんんね。栄養だけ考えてピックアップされたのでしょうが、そんなちょっと考えればわかることさえ、考慮されていないし。
ここで、上のイラストをもう一度ご覧ください。どの絵が何を指すかは良くわからない部分もありますが、かまぼこは明らかに、セロハンなどで包まれただけの、要冷蔵の板かまですね。
このイラストは、記事の一部のはず。決して賑やかしやページ数稼ぎじゃないですよね。なのに、こういうことがまかり通るのが異常なのです。他の記事でも指摘していますけど。
こういう指摘をすると、管理人は小さな誤りを針小棒大に騒ぎ立てる、なんて小せえ人間なんだ、と思われる向きもあるかと。
でも、個別のことはそれほど問題じゃないんです。非常用備蓄食品に絶対に必要な条件とはなんですか?
味だ栄養だと言う前の大前提として、
真夏の高温・高湿度下でも常温保存ができること
ではないですか?でも、それができない食品がひとつでも入っていたり、真夏でも常温で長期保存できる食品を備蓄せよという、最も重要な“指導”が全く見あたらないという不良記事が、公的資料として拡散されていることを糾弾しているのです。
ちなみに、番外編の過去記事では、非常持ち出しにカップラーメンなどあり得ない、ということを指摘しました。
【東京防災ってどうよ・番外編】ほんとバカだよね~非常持ち出しにラーメン?~(#1236)
本来は、こちらの家庭内備蓄にカップラーメンなどが入っているべきなのですが、『最小限備えたい』というコンセプトのせいか、入っていませんね。
なのに、非常持ち出しには入れてしまうという『東京防災』サマw
仕事が大規模な東京都が主体という、この仕事に関っておくとハクがつくし後々のメリットも大きいと踏んだ『防災の専門家』が寄ってたかって内容のすり合わせもせずに好き勝手やって、しかも全体を横断して監修できる人物がいなかったのでしょうね。
いても、名誉職みたいなお飾りか能力不足だったということかな(たぶん後者w)
■当記事は、カテゴリ【『東京防災』ってどうよ】です。