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2016年10月 5日 (水)

【東京防災ってどうよ44】今できる?防災アクション【11】(#1277)

『東京防災』にツッコむ44回目は、『今できる?防災アクション』の11回目です。

今回から、家具類の各種転倒対策における、具体的な問題点と対処法を考えて行きます。
Fix1

『東京防災』の098~099ページです。


L型金具(下向き取り付け)


家具と壁を木ネジ、ボルトで固定。スライド式、上向き、下向き取り付け式があり、下向き取り付け式が最も強度が高い。

ということで、その通りではあります。

しかし、最大の問題は壁。これは木ネジやボルトで固定するすべての器具に共通する問題です。

最近の建物の壁は、弱すぎるか強すぎるのどちらかがほとんどなのです。


大抵は上手く行かない?


一般的に、屋内の壁材で最も多いのが、石膏ボードです。これは厚さ15mmくらいで、その裏側は中空か、断熱材などが詰まっています。

それに木ネジやボルトをネジ込むのは大して力もいりませんが、それはすなわち、簡単に抜けるということでもあります。

石膏ボード自体がボロボロ崩れやすい材質である上に、ネジ山と噛んでいるのは板厚の15mm程度に過ぎず、後は裏側に突き出しているわけです。表面からはわかりませんけどね。

しかも、木ネジやボルトをネジ込むことで周囲に小さなヒビが入ってさらに強度が落ちるという、本来はネジで何かを固定するような想定が全くされていない建材です。

そこへ、大地震の際には数百kg、場合によってはトンに達する衝撃荷重がズシンと、それも繰り返し加わるのですから、耐えきれない可能性が非常に高い。

ボルト穴の周囲を固めて強度を上げる薬剤や、植え込んだ後に内部で板状のストッパーが開いて抜けなくなる特殊な器具(下画像は一例)もあり、それらを使えば効果が見込めますが、ボード全体がひび割れてしまえば、そこまでです。

ボードのひび割れは、必ず穴の空いた場所から始まるのです。

Mory1
Mory2
(この画像は『マンションジャーナル』様からお借りしました)

このような石膏ボード用の固定器具は、あくまで棚などを設置することを想定しているもので、瞬間的な衝撃荷重がかかる耐震器具用とは言えません。


しかし、このような器具を使うことで、ボルトが抜けるかボードがひび割れるまでの間、未対策の場合より、かなり『時間稼ぎ』ができるのは確実なので、対策する意味はあります。

でも、石膏ボードの場合は、決して『これで安心』というレベルにはなりません。あくまで、揺れ始めのうちに家具の前から移動するための、『時間稼ぎ』と考えるべきです。

一部の『防災マニュアル』には、石膏ボード壁にボルトを植え込む場合には、壁を叩くなどして裏の間柱の位置を確かめて間柱も共締めしろ、などという“指導”もありますが、それには一言。

『できるものなら自分でやってから書けよ監修者』

石膏ボードの裏に間柱が入っている場合でも、耐震器具をつけたい家具の両端に当たる場所に来ることは、まず無いのです。もしちょうど良い場所に間柱があるのなら、それはかなりラッキーだったということです。しかし、仮に片方がちょうど良い場所にあったしても、もう片方は絶対と言って良いほど位置が合わないはずですし。

さらに、最近多い、壁材の裏に綿花状の断熱材を封入する工法では、間柱自体がありません。

でも、前記事のリンク先にも書いている通り、石膏ボードの後ろに鉄板張って共締めしろと言う、建築方面の教授センセイもいらっしゃいましたし。ここも机上の空論だらけです。


良い建物ほど難しい


一方、壁にボルト類を植え込むタイプの器具が最も効果を発揮するのが、鉄筋コンクリート建物の躯体(くたい)、すなわち建物の構造壁そのものにボルトを植え込む場合です。

マンションの場合、躯体にクロスを貼った仕上げの壁も多いですから、そこなら理想的です。

ただ、鉄筋コンクリート壁にボルトを植え込むのは、ドライバーでネジ込むというわけには行きません。

まず電動ドリルでボルト穴より少し小さな穴を開けて、そこへボルトをネジ込みますが、かなりパワーのある電動ドライバーでも困難です。もちろん、手で回すのはさらに困難。

それ以前に、家庭用のツールでは、ボルトの長さだけの穴を開けること自体が難しいのです。

しかも作業は激しい騒音と粉塵を伴い、とてもじゃないけれど『日曜大工』のレベルではありません。

これは、強度の高いコンクリート躯体ほど作業が難しくなるわけで、もしコンクリート躯体壁にドリルがサクサク入ってしまったら、それはそれでちょっとヤバいですよw

管理人は、あまりの困難さに、躯体壁へのボルト植え込みは1カ所で断念しました。


大変なんですよ


このように、L型金具をはじめとする、壁にボルトを植え込むタイプの器具は設置が難しいのです。

さらに、壁や家具の損傷、美観、原状復帰などを考えると、いかに耐震効果が高くても、どこにでも使おうという気にはなれませんね。


記事には『L型金具は下向き取り付けが最も強度が高い』とあり、それは金具自体の強度や応力計算上は正しいのです。

でも、それをやるには言うまでもなく一度家具をどけて、家具の高さを精密に計り、ミリ単位の精度で金具を設置してから家具を戻してボルトを植え込むという、大変な作業が必要なわけです。

現実には、家具を動かす前に中のものをほとんど出さなければならないでしょうし。

そういった困難に一切触れず、理屈の上だけで正しいことだけ言っていれば良いのが、税金を使って全都民に向けた初の“官製防災マニュアル”である、『東京防災』の仕事ですか?

家庭防災の世界は、いつも教授センセイなどの『専門家』が、実践を伴わない理論や、時には非現実的なご高説を垂れて、それを一般庶民がおしいただくだけで、実際の作業、効果、問題点など『現場の声』は、ほとんど無視されているのです。


次回は『突っ張り棒』です。


■当記事は、カテゴリ【『東京防災』ってどうよ】です。


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コメント

やはり理想を言えば、家具を設置しないのが最善ですかね?
そして次善策として、家を建てる時点で、きちんと当て板(固定用下地)を入れておく、と…

>N様

理想は、すべての家具が造り付けですかね。でなければインテリア誌のような、モノがごく少ない生活感の無い部屋wとにかく、倒さない、動かさないのは実際には大変ですよ。

確かに建築の時点で位置をアジャストできるアンカーを壁面につけておくようなことができれば良いですね。あと、天井にも工夫が欲しいなと。

それは次回記事で触れます。

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