【東京防災ってどうよ48】今できる?防災アクション【15】(#1282)
『東京防災』にツッコむ48回目は、『今できる?防災アクション』の15回目。
正直なところ、『今やろう!防災アクション』にまだまだツッコみどころはあるのですが、小ネタをいくつか拾って、そろそろ終わりにしようかなと。
【106ページ】耐震化
家屋の耐震化についてのページには、こうあります。
阪神・淡路大震災の死者の8割が建物倒壊による圧死です。今から30年以上前の1981年5月31日の建築基準法施行令改正以前に建築された建物は大地震への安全性が低いと言われています。耐震化チェックのために、耐震診断を受けましょう。
この文章の中に、間違いがふたつあります。それを見つけて解答欄に書きなさいw
冗談はさておき、本当に間違いがふたつあります。細かいことですが、公式情報がこれでは許されない。
ひとつめは、『阪神・淡路大震災の死者の8割が圧死』だった、ということ。
正しくは、そのほとんどが圧死ではなくて、窒息死です。
圧死とは、身体が強く打撲や圧迫を受けて、内臓などに損傷を受ける、すなわち外傷的要因で死亡することです。なお、圧死のうちで一番酷い状態は、坐滅(ざめつ)。人体が完全に押し潰されている状態です。
一方、窒息死とは胸部や腹部を圧迫される、鼻や口を塞がれるなどして、呼吸ができなくなって死亡することです。
特に胸の部分は、人体の中で最も断面積が大きくて最も圧迫されやすいので、骨折や内臓損傷が起きない程度の圧迫でも、窒息しやすいのです。
すなわち、建物が崩れなくても、倒れた家具などに挟まれるだけで死亡する可能性がある、ということです。
余談ながら、胸を圧迫された時、パニック状態になるとさらに胸腔が広がって余計に圧迫されて苦しくなる、狭い場所から脱出しずらくなるという悪循環に陥ります。
ですから、わずかでも呼吸ができるならば、できるだけ落ち着いて、ゆっくりと静かに呼吸しながら、次に何をすべきか、何ができるか考えましょう。
というのは理屈で、「死ぬかもしれない」という時に落ち着けるかどうかは、誰でもその場にならなければわかりません。
軍隊でも、平時の訓練では何事にも動じない肝っ玉の据わった人が、実戦になった途端に臆病風に吹かれて動けなくなってしまう、などという事もあるそうだし、その逆もあるそうです。
なにしろ、焦れば焦るほど苦しくなるということは覚えておくべきかと。そこで生死が分かれます。
さておき、この間違いは監修者が無知なのか、建物の耐震化というテーマにに絡めて、より酷いイメージにしようと思ったのかはわかりませんが、いずれにしても許される間違いではありません。
ちなみに、『防災の専門家』でも、窒息死と圧死を区別できない人は数多くいます。何故なら、自分で知識を持たずに受け売り情報を垂れ流しているだけだから、元情報の間違いを訂正できないのです。
ふたつめは、耐震基準のこと。
大地震への安全性が低い建物として、『1981年5月31日の建築基準法施行令改正以前に建築された建物』とされています。
しかし、その日から新しい基準が適用されたからと言って、そこで全てが変わった訳ではありません。
正しくは、『1981年5月31日以前に建築確認を受けた建物』なのです。
特に大きなビルなどの場合、それから半年以上工事が続くこともありますから、実際には竣工が1982年初頭に至るまで、旧耐震基準建物が存在するのです。
ただ、『東京防災』で言っているのは一般家屋でしょうから、そこまで工事が延びたこともないでしょう。しかし、1981年後半の竣工でも、旧耐震基準建物が存在することは間違いありません。
この程度で公式情報か?
今回のネタ、細かすぎるとかレアケースに過ぎないというご批判はあるかもしれません。
でも、これらは見方や状況によって見解が変わるという言う内容ではなく、あくまで白か黒かという、曖昧さが許容されない部分です。
そして何よりも、これは東京都が公式に発行した防災マニュアルなのです。見た人は、そこに間違いはなく、正しいものとして受け取るでしょう。絶対に間違いがあってはならないのです。
管理人が今回の二題にツッコんだのは、同様の間違いを言う『防災の専門家』がかなり多い、という現実があるからでもあります。
だから恐らく、この監修者も意識的に表現を変えたのではなく、これが正しいと思っているのではないかと、管理人は考えています。東京都が選んだ監修者が、その程度だと。
これまで当シリーズでツッコみまくって来たあまりに多くのウソ、間違い、机上の空論を見るにつけ、管理人が間違っているとは思えません。
東京の、そして日本の『防災の専門家』の多くは“その程度”であり、こんな不良情報が許容される世界なのだということの証左なのかもしれませんが。
さて、まだツッコめる小ネタはあるのですが、なんだかこれ以上やるのもバカバカしくなってきました。
まだ続けるべきかどうか、ちょっと考えてみますね。
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