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2016年11月 7日 (月)

子供の命を奪った火災は不可避だったのか(#1292)

昨日11月6日、東京の明治神宮外苑で開催されていたデザインイベントで展示物の火災が発生し、逃げ遅れた5歳の男の子が焼死するという、あまりにも痛ましい結果になってしまいました。

この事故を受け、主催者は「消防法の規定に基づいていた」とコメントしましたが、一方で「600以上の出品があり、すべてをチェックするのは不可能」とも言っています。

しかし、大型作品はそれほどの数があるわけでは無いので、チェックは十分に可能だったはず。


これは人災なのか?


実は管理人、かつては東京ビッグサイトなどのイベントを運営する仕事をしておりましたので、そちら方面はプロです。防火管理者資格も持っております。

そういう目で見ると、火災を起こした作品は、異常とも言える状態でした。

そんなものを出した出品者と、それを見落とした主催者の責任は免れないものと考えます。


合法と非合法の狭間


会場の設営状態は、ニュースで見る限り、確かに消防法に適合したものに見えます。

展示スペースの間にはすべて幅3m程度の通路(避難動線)があり、展示スペースの周囲は、防炎加工した合板とアルミフレームのバックパネルで囲まれています。

このパネルは、専門の業者がイベント用に製作・設営しているものであり、強度や防炎性能は消防法の規定を満たしています。

さらに、展示物の近くには消火器が設置してあるのが見えますが、これも消防法による規定です。

もっとも、会場設計の段階で消防の認可を受けているので、設営内容で問題が出ることはまずありません。


展示物に関しては、見方によって判断が分かれる部分でもあります。

それは、それが主たる展示物なのか、付帯的な装飾かということ。

例えば、燃えやすいカーテンでも、それが商品や作品など状態が変更できないものであれば、安全を確保した上で、そのまま展示できます。

しかし、それが付帯的な装飾の場合は、木製の造作は浸漬による防炎加工が必要、装飾用の布地は、浸漬による防炎加工の上で造作に密着または接着していなければならない、つまり、一気に燃え上がりやすいふわりとさせた状態は認められないなどの、消防法による厳しい規制があります。

浸漬加工とは、防炎溶液にどぶ漬けして染み込ませる加工のことで、防炎スプレーをかけるなどの加工では認められないということです。

今回火災を起こした作品は、もちろん主たる展示物ですから、構造や造作の内容について、消防法の規制を強く受けるものではありません。

しかしその展示状態は、やはり異常としか言えません。どう見ても、『火災の発生を予見できた』としか言いようがない。


最悪の条件?


Img_2272

上画像は、火災前の展示状態です。そして、暗くなったら下画像のように内側からライトアップ。

Img_2276

これがどういうことかというと、

■防炎加工をしていない木材による骨格
■非常に燃え上がりやすい大量の木屑による装飾
■熱がこもりやすい内側からライトアップ

という、燃えてくださいと言わんばかりの状態です。

照明は、発熱が比較的少ないLEDランプだったようですが、このクラスになると、点灯中は手で触れないくらいに発熱します。

それが乾燥した木屑の中に埋まるように、すなわち熱がこもるように設置されていたら、どうなるか。

さらに、作品内部に通した電気配線のショートや発熱も、無いとは言えません。

正直なところ、専門の電気業者ならば、このような設営はしないと思うのです。照明器具は、出品者側が設置した可能性が高いと思われます。


気になること


この事故は、イベント屋的な視点で見れば、起こるべくして起きたとしか思えません。

火災以前に、子供の出入りが自由という展示スタイルならば、破損や転落などの可能性も含めて、常時監視が必要だったはずですが、おそらくそれは無かったのでしょう。


実は、ネット上に救出場面の鮮明な動画がアップされているのですが、凄惨な映像なので、リンクはしません。

それを見ると、ほとんど火が消えた後に、脚立を叩きつけて作品を破壊しようとするものの効果が無く、最後には数人で持ち上げてひっくり返しています。

その程度の重量なのですから、もっと早い段階でそうするべきでした。子供が助かったかどうかは別にして。

それ以前に、もっと早い段階で全力の消火活動が行われれば、また違った結果になっていたかもしれません。炎上中の画像を見ると、火災が最も大きくなる最盛期になるまで、誰も消火活動をしていないように見えるのです。

さらに気になるのは、出火前の映像に写っている、作品の後ろに設置された消火器が、ほぼ鎮火後の救出場面でも同じ場所に写っている、ということです。使われたようには見えません。

消火器による消火が行われている画像もありますが、上記のことからも、出火後最短時間で全力の消火活動が行われたのか、大いに疑問が残ります。


・・・・と、ここまでの記事は11月7日の午前中に書きました。

その後、日没後に作業灯として持ってきていた白熱灯を作品内で点灯していた、というニュースが入ってきました。白熱灯は温度が200℃近くにも達するので、乾燥した木屑に囲まれた中で点灯すれば、過熱して出火するのはほぼ間違いありません。

どうやら、それを予見できなかった出品者側の重大な過失による事故と言えそうです。

とはいえ、本来のLED照明だけでも、木屑に囲まれた形での設置は過熱の恐れが高く、配線の過熱やショートも含めて、火災対策がなされていたとは全く言えません。

これではっきりしたことは、やはり照明器具の設置は出品者側が行ったもので、専門の電気業者ではなかったということです。プロは、あんな危険なことは頼まれてもやらないでしょう。


まだできることがあったはず


Img_2277

会場各所には、消火器が何本も設置されていたはずです。それを全体的に把握しているのは主催者側ですが、有効な初動、すなわち火がまだ小さいうちの初期消火活動はほとんど行われていなかった、という風に見えます。

主催者側には、一応防火管理者が任命されているはずですが、現実には出火時の初動は出品者任せだったものと思われます。これが屋内展示施設ならば、火炎感知器やスプリンクラー、放水銃などが作動したでしょう。

屋外だったことが、さらに初期消火を遅らせたということもできます。


実は、上画像には消火における象徴的な問題も映し出されています。

消火器使用者が風下から火点へ接近しているので熱気で十分に近寄れず、しかも消火剤が風で吹き戻されています。

しかも、消火剤をもっともかけなければならない『火の根本』ではなく正面に向けて噴射しているので、これでは火の勢いを抑えることさえほとんどできないうちに噴射が終わってしまったはず。

これは、当ブログ過去記事でも触れていますが、消火器使用における典型的な失敗例であり、普段から意識や訓練をしていないと、多くの人が陥る失敗なのです。

消火器使用における失敗例と対策については、下記リンク先の過去記事をご覧ください。
【東京防災ってどうよ05】ここがダメなんだよ【1】(#1213)


このように、この悲惨な事故は、多くの面での問題が見え隠れしています。

これからさらに真相が明かされて行くのでしょうが、元イベント屋的視点で、現段階で考えられることをまとめてみました。残念なことに、起こるべくしておきて拡大するべくして拡大した事故ということができます。

こういうことをしっかり考えて具体的な対策を行うことが、次の安全を高める道なのですが、現実にはすぐに忘れられてしまうことが多いのです。

それでは、犠牲者も浮かばれません。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

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