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2016年12月 6日 (火)

【福岡タクシー暴走】車両原因の可能性が高まる(#1297)

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2016年12月3日に福岡市で発生し、3人が犠牲になったタクシー暴走事故は、どうやらいわゆる『踏み間違え事故』では無い可能性が高くなってきました。


事故の状況


この事故の経緯をまとめると、以下のようになります。

■運転手の証言によると、事故現場の300mほど手前で停車して発進した時から、ブレーキが効かなくなりはじめていた。

■エンジンブレーキをかけようと、セレクターをLレンジに入れたが効果が無かった。

■途中の一時停止2カ所も、止まることができなかった。

■暴走中も、途中の駐車車両を避けながら走行している。

■事故現場50mほどで急加速し、そのまま病院に突入した。


事故状況の分析


これらの状況からわかることは、

■ブレーキが効かなかったのではなく、エンジン回転数が異常に上がっていた状態だった。オートマチック車の場合、加速状態でエンジン回転が一定以上に上がると、フットブレーキやパーキングブレーキの制動力を加速力が上回って車を止めることはできず、エンジン回転数が最高出力付近になれば、減速することも困難。

■暴走中も、ドライバーはエンジンブレーキをかけようとシフトダウンしながら路上の障害物を避けて走行し、途中2カ所の一時停止を止まれなかったことも認識しているので、認知力低下、意識喪失、極端なパニック状態では無かったと考えられる。

■踏み間違えであれば、早い段階からアクセルペダルをブレーキと勘違いして強く踏み込んでいるので、最初から急加速する。しかし、突入直前になってさらに急加速、すなわちエンジン回転が上昇していることから、アクセルペダルを踏んだことによる車の反応では無い可能性が高い。

■ドライバーがシフトダウンした場合、加速力は強くなっても加速度自体は低下するので、最後の急加速はシフトダウンの効果とは考えにくい。(なお、最後の急加速は目撃者の見かけ上の印象である可能性も捨てきれない)


これらのことから、ドライバーの誤操作である可能性は低いと考えられます。


ハイブリッド暴走の悪夢?


ここで注目すべきは、車両がトヨタのハイブリッド車、プリウスであることです。

エンジンとモーターの出力を合成して走るハイブリッド車の場合、少なくともトヨタ方式のTHS2型の場合、エンジンが正常でモーターだけが暴走した場合でも、ブレーキをかけた車を引きずって加速する力があります。

しかし、エンジンとモーターはコンピュータにより統合制御されているので、完全に別々に作動する可能性はあまり考えられません。

エンジンやモーターがどのように作動したかは、ドライブレコーダー、エンジン制御コンピュータ、さらに事故車両にタコグラフが搭載されていれば、それらの解析で詳細に明らかになるでしょう。

ただし、誤作動だった場合、事故車固有の機械的トラブルなどが発見されなければ、その原因究明にはかなり手間と時間がかかりそうです。

いずれにしろ、今トヨタ社内は大騒ぎのはず。数年前に米国で発生した、プリウスのニセ暴走騒動で大きなダメージを受けた悪夢が、さらに悪い形で蘇るかもしれないのです。


事故の付帯的状況


この事故のドライバーは、個人タクシー運転手です。

個人タクシーの営業資格を取得するには、法人タクシーの営業経験が10年以上無ければならず、その間に大きな事故、交通違反、乗客からの苦情などがあってはなりません。

すなわち、少なくとも運転に関しては大ベテランであり、運転技術が未熟だった可能性は排除できます。

あとは健康の問題ですが、64歳ということで、認知、運動能力の低下は多少あったとしても、認知症の可能性は低そうです。

他の理由によって意識の混濁や喪失を起こしたり、故意による突入の可能性も、証言などの報道を見る限り、高いとは言えません。

やはり、車の異常が主原因である可能性を示唆しています。


あなたならどうするか


この事故について現在わかるのはこれくらいであり、今後の調査を待つしかありません。

しかし、事故の主原因が車側のトラブルだっとしても、ドライバーの対処が適切だったとは言えません。

エンジン車でもハイブリッド車でも電気自動車でも、もしあなたが同じような状況に陥ったらどうするか、考えてみてください。

おわかりの方も多いかと思いますが、こんな事故を簡単に防ぐ方法があるのです。


車が意に反して暴走した場合、ただセレクターレバーをニュートラル(N)レンジにするだけで、エンジン、モーターと駆動系が機械的に遮断されます。

あとはブレーキをかけるだけ。ブレーキ系統は車の中でも最も信頼性が高い部分であり、本当に「ブレーキを踏んでも効かなかった」という故障はまず起こりません。

もちろん、下り坂やスポーツ走行で酷使してフェードやベイパーロックを起こすような場合は除きますが、それでも機械的故障ではありませんし。

仮にフットブレーキが効かなかったら、パーキングブレーキを思い切りかけます。

もっとも、パーキングブレーキも主にリアホイール側のディスクブレーキやドラムブレーキをフットブレーキとは別系統で作動させているので、その部分に故障があったら効きません。

しかし、普通に整備されている車ならば、まず起こり得ない故障なのです。

最近は、オートマチックのセレクターがレバーではなく、ダイヤル式やボタン式のようなものも出てきて、とっさの操作がしにくいものもありますが、そういうことを考える必要が無いくらい、暴走事故は世界的にも起きていない、ということでもあります。


今回の事故で残念でならないのは、大ベテランのプロドライバーが、それも年代的に確実にマニュアルシフト車の経験も豊富なはずのドライバーが、シフトダウンまでする冷静さを保ちながらも、『シフトを抜く』という発想に至らなかったことに尽きます。

パニックに陥ってしまえば、普段できることが何もできなくなるのが人間ではありますが。

逆に、マニュアルシフト車ならばクラッチを切るだけで大丈夫な分、それが無いオートマチック車での対処を誤らせた可能性さえあります。

下り坂でブレーキ故障のために暴走したら、まずシフトダウンしてエンジンブレーキという発想は、教習所でも教わるマニュアルシフト車での対処法です。

そして、マニュアルシフト車の場合はブレーキが効かない状態でシフトを抜くことは考えられないので、この事故のドライバーの対処は、完全にマニュアルシフト車のそれでした。そんな対処をとっさに行ったものの、オートマチック車には効果が無かったというわけです。

もっとも、上記の対処法はブレーキ故障の場合であり、エンジンやモーターが暴走した場合ではありません。


これからどんどん増える


今回の事故は、どうやら車両側に原因がありそうです。

しかし、これはごくレアケースです。一方でドライバー側の原因による暴走事故が急増していて、車両側の対処が進まない限り、これからも増えて行くことは確実です。

これは冗談ではなく、少なくとも道路上や道路に面した場所にいる時は、その場所が車に突っ込まれる可能性があるかどうか、頭の隅ででも考えることを習慣にしたいものです。

もっとも、それが怖いと感じる人は、自然とそうなるでしょうが。


命を守るのが防災


最後に、私事ではありますが、管理人はかつて、今回の現場近くにあるホール『マリンメッセ福岡』を使ったイベント運営をやっていたことがあり、今回の事故現場である原三信病院は、いろいろお世話になった場所でもあります。

周辺の土地勘もありますので、あまり他人事とも思えません。

それにしても、病院にお見舞いに来て命を落とすなど、誰が考えるでしょうか。しかも今回の場合、道路に直接面した場所でもありません。

それでも、レアケースとは言えこういう理不尽なことが起きるのが現実であり、さらに危険要素が多い場所では、起こるべくして起こります。

我々がそんな交通事故に遭遇して命を落とす確率は、巨大災害よりもはるかに大きいのです。


防災とは、命と生活を守ること。

その対象は自然災害に限らず、大切なことは、決してモノ集めや予知ゴッコではありません。

その前に何が必要か、したり顔の『専門家』などの御託など聞く前に、まずご自分で考えてみて下さい。


◼︎当記事は、カテゴリ【交通の安全】です。

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コメント

ブレーキが効かない原因は、トヨタがホームページ上で公言していますよ。
●カムリ、プリウスなど6車種 ブレーキアクチュエータの修理
http://toyota.jp/recall/kaisyu/160713.html
「タクシーや法人でご使用される事業用登録車両でのブレーキ頻度の高い厳しい使われ方により、ブレーキアクチュエータの油圧制御電磁弁シール部が摩耗し、リーク量が増えることでフェールセーフモードに入り、警告灯が点灯、その状態で継続使用すると警告音が吹鳴し、ブレーキの効きが低下することがあります。」
ドライバーが所属している博多個人タクシー協同組合で話を聞いたのですが、ドライバーは警告灯が点灯していたと話しているようですし、防犯カメラの映像ではブレーキランプの点灯が映っていたそうです。

50m手前から加速していたという証言は、恐らく、ドライバーがエンジンブレーキを使おうとBレンジに入れている事が関係していると思います。
プリウスマニアの掲示板にはこのような書き込みがありました。
「プリウスの場合、ある程度速度が乗っていてBモードにした場合、クランクが
回りっぱなしになりますので、エンジンスタートラグがなくなります。
ですので加減速を繰り返した場合、大変レスポンスがよく感じます。
峠道の上りでBレンジを使うと凄く走りやすいですよ。お試しください。」

トヨタの保証期間延長の対応は、あくまで発生対応ですから、今回もこれから部品を換えて下さいという事でしょうが、ブレーキの問題は発生してからでは手遅れです。

ついでに参考ですが、2010年にアメリカのハイウェイで暴走した20プリウスは、パトカーが前方にまわって無理矢理に停止させました。
http://carkingdom.jp/2010/03/post-315.html
このときもドライバーはブレーキが効かなかったと証言していましたが、最後は金の力で口止めしたのかうやむやにされましたね。

その20プリウスについても昨年、保証期間延長が出されています。
●プリウスなど7車種 ブレーキアクチュエータの修理
http://toyota.jp/recall/kaisyu/150708.html
「ブレーキ頻度の高い厳しい使われ方により、ブレーキアクチュエータのソレノイドバルブシール部が摩耗し、フェールセーフモードに入り、警告灯点灯、警告音吹鳴、ブレーキの効きが低下することがあります。」

この説明はトヨタの誤魔化しがあり、フェールセーフモードではなく、
「ブレーキアクチュエーターが内部で液漏れし、圧力を保てなくなると、ブースターポンプが回りっぱなしになって最終的にブースターポンプが焼き付き、ブレーキが効かなくなる。」という事だと思います。

さらについでですが、こういう危険な不具合も誤魔化して保証期間延長(発生対応)なんてあり得ません。
●エスティマなど9車種 電動パワーステアリングの修理
http://toyota.jp/recall/kaisyu/110629_1.html
「低温下でエンジンの停止・始動を頻繁に繰り返しますと、エンジン始動時に電動パワーステアリングコンピュータ内の電源リレーの接点部が一時的に溶着し、メータ内のパワーステアリング警告灯が点灯することがあります。」

警告灯が点灯するぐらいならば問題ないし発生対応も許されますが、国土交通省の不具合情報ではパワステが効かない不具合が多発しています。

今回、紹介させてもらった問題ですが、トヨタからの届け出も不具合情報も国土交通省には情報が入っていますので、国土交通省は承知で黙認しています。
これが天下りによる弊害なんですよ!

>タック様

詳細な情報をありがとうございます。

なるほど、そんな問題があったのですね。しかしリコール事案とはならず、発生時の無償修理という。これが今の三菱自動車ならば、リコール隠しとして叩かれるレベルの事案ですね。パワステの件も含めて、そうなるウラにはいろいろあると。

それにしても、すでにプリウスのタクシーは国内外とも相当な数が走っています。それでも定期点検や車検時に対策部品と交換するなどという対応さえ無いのですね。

しかもサイトの文言では、対策部品があるようでもなく、あくまで新品と交換、というだけのような。ブレーキが効かなくなるというのに、そんな対応とはショッキングです。

それにしても、福岡事故はブレーキが効かなかっただけでなく、明らかに加速しています。突入直前には駐車車両を避けた後、制御できずに反対側の縁石や標識に接触していますから、理由は不明ながら、スロットルが開いた状態になっていたと思われます。

米国の暴走事例でも、その真相ははともかく、現象としては加速したまま減速できなくなったわけですから、ブレーキ以前にスロットルの制御に異常が発生した、ということでしょう。

また、福岡事故ではブレーキ警告灯が点灯していたことをドライバーが認識していたということであれば、ドライバーや運行管理者(個タクの場合は本人?)の管理責任も問われることになりますね。

とにかく、ブレーキ故障だけでは起き得ない事故であるということは確かかと考えます。今後の情報を待ちたいと思います。

2019年3月27日、タクシー暴走事故について、福岡地裁は被告側の主張を認めず、有罪判決を下した。その記事の中で、被告側が公判で「ブレーキペタルを踏んだが、鉄板を踏んでいるように全く踏み込めなかった」と主張していることを知った。私も昨年自損事故で済んだものの、全く同じ体験をしただけに看過できません。私は信号機のない交差点を左折するために、その手前30メートルのところで、軽く踏んでいたアクセルペタルからブレーキペタルに足を移し替えたところ、ブレーキペタルがロックされたように全く動かず、同時にアクセルペタルに全く触れていないにもかかわらず、車が一気に加速。交差点を60㌔位で突き抜け、さらに100㌔位まで加速・暴走し、100メートル先の田んぼに宙に舞う様な形で飛び込み、5、6回転し、車が大破した。幸いにも水と稲がクッションとなり、奇跡的に怪我がなくて済みましたが、一歩間違えば大変な人身事故になりかねませんでした。コンピュータの誤作動以外に考えられませんが、そこのところを明らかにしていく対策、対応が強く求められるのではないでしょうか。
~

私も以前タクシー運転手をやっており、定番のクラウンコンフォートでしたが、お客さんを乗せて坂道を登っていてぼちぼちその上り坂が終わる頃にアクセルを足から離した所、アクセルが戻らなくなりエンジンの回転数が上がっていくのが分かりました。

これは平坦な道に入ったら暴走すると思いましたのでやむなくエンジンを切って5分ぐらい間を置いて掛けなおした所、普通にかかりましたので何とか無事お客様をお送りすることができました。
勿論お客様からは怒られましたが。

それと2年前暑い夏の時は、同じくクラウンコンフォートでエコモードの少しモデルチェンジしたのに乗っていた時は、待機しているとエンジンがガクガクなり始めてエンストを起こすのです。
修理に持って行き、スパークプラグとかガスタンクを外したり根本を修理しても直らない、夏の暑い時期になるとエンストを起こす車とか色々ありました。

ちなみにその車はずーっとエンジンのチェックランプが付いていましたが、整備が乗って良いと言われていたので乗っていましたが。

やはりどうしても毎日毎日動かすので、そういう不具合が出てくるのでしょうかね。

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