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2017年9月11日 (月)

【ミサイル攻撃の基礎知識05】たとえ鉄壁の護りだとしても(#1339)

今回は、誰もが一番気になる点、弾道ミサイルは迎撃できるのかということについて考えます。


たぶんうまく行くけれど


現時点(2017年9月)における我が国の弾道ミサイル迎撃体制は、2段構えです。

まず、日本海に進出している海上自衛隊のイージス艦から発射されるSM3(Standard Missile 3)迎撃ミサイルが、ミッドコース(中間)フェイズでの迎撃を行います。

そこで撃ち漏らしたミサイルに対して、陸上からペトリオット(patriot)PAC3ミサイルが、ターミナル(終末)フェイズでの迎撃を行います。

近い将来には、米国製のTHAAD(サード Terminal High Altitude Area Defence 終末高高度防衛)ミサイルが配備される計画であり、実現すれば3段階の弾道ミサイル迎撃体制となり、さらに確実性が増します。

また、まだ計画が表明された段階ですが、将来的にはイージス艦のレーダーシステムとSM3ミサイルの陸上型、イージス・アショア(Aegis Ashore)も配備される計画で、さらに確実な迎撃が可能になるでしょう。

なお、ミサイル発射の情報は日米の情報収集衛星、日本海付近に進出した日米のイージス艦のレーダー、日韓の地上レーダーや米軍の偵察機などのネットワークによって発射直後に探知され、瞬時に共有される体制です。

弾道ミサイルに限らず、ロケットの発射時には高温ガスの噴射によって大量の赤外線が発せられるので、発射とほぼ同時に探知することが可能です。

弾道ミサイルの場合は、レーダーで弾道を観測することで、落下地域を予測することができます。弾道ミサイルは、ほぼ物理法則に従った放物線を描いて飛行(弾道飛行)するので、ロケットで上昇するブーストフェイズから慣性によるミッドコースフェイズに入った段階で、その落下地点を大まかに計算できるわけです。

これだけの体制なら、ほぼ大丈夫と考えて良いのでしょうか?


航空迎撃とは違う


弾道ミサイルの『迎撃』とは、どういうことなのでしょうか。

相手が爆撃機ならば、爆弾を落とす前に撃墜してしまえば終わりです。低空を飛んでくる巡航ミサイルなども、迎撃ミサイルや対空機関砲が命中すればおしまい。

でも、弾道ミサイルの迎撃は、それで済まないのが怖いのです。

迎撃ミサイルは、ふた通りの方法で弾道ミサイルを破壊します。

SM3ミサイルと将来配備されるTHAADミサイルは、運動エネルギー弾頭です。その名の通り命中しても爆発はせず、固く重い弾頭を超高速で直撃させることで、運動エネルギーによって破壊します。

もうひとつは、近接信管によって敵ミサイルのごく近くで爆発して、破片をまき散らして破壊する方法。ペトリオットPAC3ミサイルは、この爆発破片弾頭と運動エネルギー弾頭を併用しています。

しかし、これらの方法で完全に脅威が無くなるわけではないのです。

命中した場合でも、敵ミサイルの弾頭が爆発するとは限りません。特に核弾頭の場合は、高い確率で起爆システムを破壊して核爆発を防ぐことはできるはずですが、核物質を載せた弾頭部自体は破壊されない可能性も低くありません。

すなわち、弾道ミサイルの迎撃とは、完全に成功したとしても、あくまで弾頭を無力化して当初の目標への落下を防ぐだけ、と言っても過言では無いのです。

その結果何が起きるかというと、無力化された弾頭やその破片、場合によっては燃料タンクやロケットエンジンという大物が、目標地点の手前に“降ってくる”ということになります。

慣性による弾道飛行中に、直撃や爆発によって外部からの力が加わった物体がどのようにコースを変えるか、それも重量も形状も様々な多数の破片がどこに落ちるかは、大体このくらいの範囲という予測しかできません。

そして、ミサイルが破壊される高度が高いほどその範囲が広がり、破壊された場所によって、大きく変わってくるわけです。


あの時のこと


2017年8月、北朝鮮のICBMが北海道上空を通過しました。

あの時は、弾道のレーダー観測から我が国の領域を狙ったものではないとわかっていたことと、北海道上空での高度は500km程と、現有の装備では迎撃できない高度だったため、我が国での『破壊措置』、すなわち迎撃は行われませんでした。

しかし、それでも東日本の大部分、群馬県や長野県にまで、Jアラートによるミサイル警報が発表されました。 それは、なぜなのでしょうか。

あの時の起きたことが、弾道ミサイル防衛の困難さを象徴しているのです。

次回へ続きます。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

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コメント

昨今の周辺国の言動を鑑みると心中穏やかではいられませんね。
個人で出来る事では限りがあるので若干諦めの境地ですが、非常事態の避難場所や経路等の確認と非常用品の点検をしています。通常点検を2ヶ月前倒しでね!

ところで記事下段に「2107年8月」とありますが、、、

何と言うか、ミもフタもない言い方をすると、
「たとえ迎撃に成功しても、核物質が降ってくる事実に変化はない」
わけですよね。

発射国の領空内で落とさないと、放射能からは逃げられないかと。

>カメレオン様

我が国が直接狙われる可能性はかなり低いものの、突然何かが降ってくる可能性は捨てきれませんね。

なにしろ、日頃からの防災意識と行動をしておくことで、様々な危険への対処力が上がります。

誤植のご指摘ありがとうございました。なんだか未来の話になってましたねwでも残念ながら、今そこにある危機ではあります。

>N様

核弾頭搭載のミサイルが我が国上空で破壊された場合はそうなります。でも、空中で粉々になれば、地上での汚染はごくわずかでしょうし、近くにそのまま落ちてきても、汚染範囲は局限されますから、すぐに避難すれば、重大な影響は受けないレベルで収まるでしょう。

残念ながら、発射国の国内に落とすような迎撃はできませんが、発射の失敗で勝手に落ちてくれることはあるかと。

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