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2017年9月 7日 (木)

【ミサイル攻撃の基礎知識03】言うほどの脅威ではない?(#1337)

前回に続いて、弾道ミサイルの基礎を考えます。今回は、大気圏突入段階です。


最も困難な段階


弾道ミサイルは、ブーストフェイズでロケットをふかして上昇し、ロケットを切り離してミッドコースフェイズの弾道飛行をしながら次第に高度を下げ、次は大気圏再突入です。

この段階から地表に落下するまでをターミナルフェイズ(terminal phaze)と呼びます。

この段階では、落下角度を非常に精密に制御することが必要です。落下角度が浅すぎれば大気層に弾き飛ばされて突入できず、深すぎれば速度が出すぎて、大気摩擦熱で弾頭が燃え尽きてしまいます。

このため、突入前の最終段階で小型ロケットモーターをふかして正確な方向と角度に制御しなければなりません。これは人工衛星の姿勢制御や、有人宇宙船の大気圏再突入制御と同様の非常に高度な技術であり、それが命中精度も大きく左右します。

但し、原始的な弾道ミサイルではこの制御を行わず、そのまま落下して来るタイプもあり、その場合には再突入に成功しても、目標から数kmから数十kmもの誤差が出ることもあります。

北朝鮮の弾道ミサイルは、複数が発射された場合でも比較的近い範囲に着弾していることが確認されており、それなりの命中精度を実現しているものと見られます。

しかし、キロメートル単位以上での誤差はありますので、現時点では例えば陸上の基地や原発などを直撃できるような精度はありません。戦術的な意味においては、あくまで核弾頭搭載を前提として周囲数kmを破壊できなければ、有効な攻撃とは言えないのです。

しかし、それはどこに落ちるかわからない、もしかしたら核、生物、化学弾頭が搭載されているかもしれない、運が悪ければ人口密集地や重要施設を直撃するかもしれないという恐怖を醸成する、戦略的、政治的な意味合いが大きいものでもあります。

そして、それが弾道ミサイルを保有することの最大の効果、ということができます。


どこまで精度が上がるのか


現代において最高の精度を持つと考えられる米国の大陸間弾道ミサイルは、半数必中界が半径50mと言われます。 これは核弾頭搭載時には全く無視できる誤差で、基地などの施設への直撃さえ可能な精度です。

半数必中界とは、投射型兵器の命中精度を示す指標です。例えば10発発射した場合に、最低でもその半数の5発がその範囲に命中する精度という意味で、CEP(Circuler Error Probable)とも言われます。


なお、米国、ロシア、イギリス、フランス、中国が保有する大陸間弾道ミサイルには、1基のミサイルに弾頭が複数(最大10発程度)搭載されているタイプがあり、それぞれ個別の目標を狙えます。

これは、ミッドコースフェイズの最終段階において、弾頭を搭載した部分(PBV Post Boost Vehicle)を小型ロケットモーターでそれぞれの目標への落下コースへ精密に指向し、一発ずつ切り離して行くという方式によります。それぞれの弾頭は、MIRV(マーヴ Multiple Independent- targetable Reentry Vehicle)と呼ばれます。

これに対し、北朝鮮の弾道ミサイルは現時点では単発弾頭です。しかし、技術的には単発弾頭の方がMIRVより命中精度が上げられるとされており、今後弾頭の小型化と再突入制御技術がさらに向上するとすれば、最終的には半数必中界が50m以下、すなわちほとんどピンポイントに近い精度になる可能性もあるのです。

但し2017年時点においては、まだ発射自体の失敗も発生しており、再突入制御技術もそれほど洗練されてはいないものと考えられます。だからと言って、大した脅威ではないと侮ることもできません。

弾道ミサイル攻撃は、仮に失敗したとしても“どこに落ちるかわからない”ということに、大きな戦略的意味があるからです。

さらには、より多数の目標を狙える、多弾頭タイプのミサイルの実用化も無いとは言えません。 北朝鮮のミサイル技術は、急速に進歩しているのは確かなのです。

次回は、軍事的攻撃で発射を阻止できるかについて考えます。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。


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