【ミサイル攻撃の基礎知識10】シミュレーション・X day03(#1344)
【ミサイル攻撃の基礎知識09】シミュレーション・X day02(#1343)からの続きです。
破綻
近年は外国人観光客が必ず立ち寄ると言われる人気スポットとなった、渋谷駅前のスクランブル交差点にも、“その時”は突然やってきた。
午後8時過ぎ、その人混みがピークを迎えようとしていた時、街の雑踏を圧するような音量であの警報音が鳴り響き、交差点を見下ろす巨大スクリーンに、黒字に白い文字が浮き上がった。
『ミサイル発射。ミサイル発射。この地域に着弾の恐れがあります。』
青信号で交差点を渡りかけた人々が巨大ビジョンを呆けたように見上げて立ち止まり、ポケットやバッグの中で不気味なうなりを上げるスマホを取り出しては、それが訓練でも間違いでもないことを確かめた。次の瞬間、海外では「なぜ誰もぶつからないのか不思議」と言われる秩序が、一気に破綻しはじめた。
スクランブル交差点上は、呆然と立ちすくむ者、急に走り出す者、逆方向に戻る者、完全に混乱して右往左往する者が入り交じり、ぶつかり、押し退け合い、転び、叫び、つかみ合った。
歩行者信号が赤になってもパニック化した群衆は道路上に留まり、我先に突っ込もうとする車のホーン音が渦巻いた。
多くの者は広大な渋谷地下駅へ逃げ込もうとして階段に殺到したが、混乱を極めた階段の前は、ほとんど前へ進むことができなくなっていた。
衝突
道玄坂では、スマホの警報を聞いた人々が坂の両側に並ぶ店から飛び出して車道上にまであふれ、ここでもホーンの嵐になった。
一部の者は、道玄坂上の首都高3号線の高架下や、国道246号を挟んだセルリアンタワーに逃げ込もうとして坂を駆け上がり、また一部はマークシティビルに続く登り坂に殺到し、また一部は道玄坂下のビル群に逃げ込もうと坂を駆け下り、無秩序の流れがあちこちで衝突した。
公園通りでは、坂下のビル群に向かおうとする者と、坂上の代々木公園やNHKに逃げ込もうとする者の流れが衝突した。
ビルの上階にいた者は、その多くが地下を目指した。エレベーターは無理に乗り込もうとする者で定員超過となって動かず、階段に殺到した。
しかしほとんどは階段にたどり着くことさえかなわず、幸運にも階段を降りられても、すでに地下は人であふれ、殺到する者と押し戻そうとする者が衝突し、絶叫が渦巻いた。
誰もが地下、そし“頑丈な”遮蔽物を求めて駆けた。しかし、今回はミサイルの部品が降って来るだけではない。誰もリアルにイメージはできなかったが、核爆発に晒される可能性が高いのだ。
理由
日本本土へのミサイル攻撃に、この時間が選ばれたのには理由があった。
多くの人が自宅、学校やオフィスにおらず、逃げ場が少なく危険物にあふれた繁華街に最も出ている。そしてまだ日が暮れたばかりで、夜明けまで長い時間の暗闇が続く時間帯。
暗闇はそれだけで避難も対処も救援も遅らせ、混乱に拍車をかけて、自動的に被害を拡大する。最も“効率的”に被害を極大化する時間帯、それが今なのだ。
そんなことに気付く者はほとんどいなかったが、少なくとも攻撃者の目論見は、おそらく想像した以上の効果を上げつつあった。
残された時間は、あと2分もない。
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