【ミサイル攻撃の基礎知識12】できることはごく僅か(#1346)
前回は、核爆発の際に起きることをざっくりとまとめました。今回からは、小説の登場人物の行動を例に、核爆発への対処方法を考えます。
大前提として
これは言わずもがななのですが、実際に核攻撃を受けた場合、爆心から比較的近い距離で被爆したら、何をやってもほとんど無駄、というのが現実ではあります。
爆心付近では、深さ数十メートル以上で、NBC(核、生物、化学兵器)防護性能のある専用シェルター内にでもいない限り、生き残ることはほとんど不可能でしょう。
市販の家庭用シェルターなどではひとたまりもありませんし、仮に最初の爆発を生き残っても、その後の大火災や濃密な残留放射線から生き残ることは困難です。
これから述べる対策は、あくまで爆心からある程度の距離があった場合に効果を発揮”するかもしれない”というものです。
その『ある程度の距離』とは、核爆発の規模や周囲の地形、地物などの状況に左右されるもので、何km離れたら助かる、という話ではありません。
現代の核爆弾は、15〜20キロトン(TNT火薬1万5千〜2万トンと同等の爆発エネルギー量)と言われる広島型原爆の何十倍、何百倍ものエネルギーを放出します。
それはもちろん、爆風の威力だけでなく、熱線や放射線の威力もはるかに大きい、ということでもあります。
マニアックなことに触れれば、最先端の核爆弾は、放射線、熱線、爆風の威力が用途によってある程度コントロールされているものもあります。
しかし、少なくとも現在の我が国に飛んでくるかもしれない核爆弾は、そういうタイプでは無いことは確かです。
ある程度の距離が前提
前記事で述べた通り、核爆発において最初に放出されるのが放射線です。それとほぼ同時に火球が発生し、超高温の熱線が放射されます。そして、音速を超える爆風(衝撃波)と、吹き飛ばされたものが襲ってきます。
広島や長崎で、原爆が『ピカドン』と言われた所以です。火球が放つ閃光がピカっと光った直後に、爆風がドンと襲って来たわけです。
まず、この段階をいかに生き残るか。繰り返しますが、これから述べる方法は、”たまたま”あなたの居場所が爆心からかなりの距離があり、放射線も熱線も爆風も、ある程度減衰した状態で効果を発揮するものです。
ある事実から学ぶ
以下は、広島で起きたひとつの事実です。
爆心から何kmも離れたある学校では、始業前に(広島原爆の起爆は午前8時15分)、教員が職員室に全員集まっていました。
その時、広島市の中心部の方角で、強烈な閃光が発せられました。『ピカドン』のピカです。すると、ひとりを除いた全員が、「何事だ?」とばかりに席を立って窓を見ました。
その数秒後、爆風が襲いました。コンクリート造りの校舎自体は爆風に耐えたものの、窓などの開口部から突入した超音速の爆風が室内を吹き抜けて立ち上がった全員を吹き飛ばし、全滅しました。
その中でひとりだけ生き残った教員は、閃光を見た瞬間、反射的に窓の下に身を伏せたのです。
その教員は、中国戦線での従軍経験があったので、攻撃(らしきもの)を受けたと判断した瞬間、まず遮蔽物の陰に身を伏せるという行動が身についていたために、爆風に吹き飛ばされず、ガラスなどの破片も浴びなかったのです。
加えて、当時は全く意識されていなかったことですが、コンクリート壁の陰に伏せたことで、起爆後1分ほどの間に照射される、強い放射線もかなり遮蔽されていたはずです。
この人の行動が、不時の核攻撃における唯一絶対の対処方法と言っても過言ではありませんが、これも、熱線が致命的ではなくなり、爆風がある程度減衰する距離と、それに耐えた校舎という遮蔽物があってこそだったわけです。
次回は、この事実を前提として、小説の中での防護方法を解説します。
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