陸自戦闘ヘリ墜落について(#1349)
佐賀県で、陸上自衛隊の戦闘ヘリコプター、AH64D(愛称・ロングボウアパッチ)が民家に墜落して乗員2名が死亡するという、ショッキングな事故が起きました。やはり書かずにはいられません。今回はこの事故の考察と、バカ丸出しの『専門家』について。
航空機、ミリタリーマニアの管理人ですから、かなりマニアックな内容となりますが、基本的にはとてもシンプルなことなのです。
なぜ事故は起きたか
事故の第一報を聞いた瞬間、管理人はローター(回転翼)のトラブルを想像しました。なぜなら、
■AH64型戦闘ヘリコプターは米国を始めとする西側各国で大量に配備されてるが、特に構造、設計上の弱点と言える部分に起因する、ある種の類型的な事故がす多発するようなことは起きていない。
■墜落地点周辺にはに空き地が多いのに民家を直撃していることから、瞬間的に深刻な操縦不能に陥ったことが明らか。
ヘリコプターがそのような状態に陥る原因は、ひとつしか考えられません。それは、ローターの破損です。
そのような事故は、低空飛行時に電線などとの接触によって発生することが多いのですが、報道によればかなり飛行高度があったとのことで、その可能性は排除できました。
そして、近くの自動車教習所で撮影された墜落時のドラレコ画像を見て、それは確信に変わりました。映像から読み取れることは、
■通常の水平飛行をしている最中に突然姿勢を崩し、その後はあたかも“石のように”ほとんどまっすぐ落下し、最後には“木の葉のように”不規則な回転をしている。最初にテイルローター(機体尾部の小回転翼)の機能が失われれば、機体はトルク反動ですぐに水平回転を始めるので、事故機のトラブルはメインローター(主回転翼)に発生し、瞬間的にメインローターが失われたと考えられる。メインローターが機体に残っていれば、竹トンボが姿勢を保つのと同じ原理(ジャイロ効果)により、“木の葉のような”不規則な回転はしない。
ちなみに、トルク反動のわかりやすい例は、回転椅子に座って両手を広げ、例えば時計回りに身体を回転させようとすると、回転椅子は反時計方向に回る、ということです。
ヘリコプターは、メインローターから離れた尾部でテイルローターを回し、メインローターの回転と逆向きにかかる回転力であるトルク反動を打ち消しているから、機体は回転せずに飛べるのです。(二重反転式ローター、圧縮空気噴出式など例外もありますが、トルク反動を打ち消している点で同様です)
■落下の最中、薄い黒煙のようなものが見える。通常のヘリならば、飛散した部品がエンジンカバーを突き破ってエンジンを損傷することも考えられるが、戦闘ヘリであるAH64Dのエンジンカバーは、23ミリ機関砲弾の直撃に耐えられる以上の装甲が施されているので、その可能性は排除される上、破断したローター部品がエンジン吸気口から吸い込まれてエンジンを損傷する可能性も、構造的にまず無い。よって、異常姿勢での急降下によってエンジンへの吸気が乱れ、コンプレッサーストール(異常燃焼の一種)が発生して黒煙が出たものと考えられる。または、急に負荷を失ったエンジンが異常回転して損傷したかもしれない。いずれにしろ、エンジントラブルが原因ではない。
目撃者の証言からも、空中でローターが飛び散ったというものが複数ありました。これらのことから、ヘリにとって最も恐るべき事態、空中でメインローターを失うという、信じられないようなことが起きてしまったことがわかります。
整備不良か?
その後の報道では、事故機はメインローターのマスト(取り付け軸部分)を交換した後の試験飛行だったとのこと。交換した部分にトラブルが起きたのですから、組み付けもしくは部品の不良によって、ローター破断が起きた可能性が非常に高いということがわかります。
手前味噌ながら、専門家ではないただのマニアの管理人でも、これくらいまではわかるのです。航空機に詳しい皆様も、ほぼ同様のご見解になるかと。
しかし、そうではない輩もいるのです。
次回はさらなる考察と、やはり現れたエセ『専門家』についてです。
■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。
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