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2019年1月26日 (土)

《再掲載》【防災の心理10】赤信号、みんなで渡っても・・・(#1372)

当シリーズの前回記事で、今回はどんな心理について考えるのか、大体おわかりいただけたのではないかと思います。つまりは、人は危機に陥った時ほど誰かと一緒にいたい、誰かに道筋を示して欲しい、誰かに依存したいという心理です。

それを心理学的にどう呼ぶのかは不勉強にして明らかではありませんが、一般的には「群集心理」と呼ばれるものに近いものでしょう。もちろんそれは、危機でなくても生活のあらゆる面で顔を出します。

かつて「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というギャグが流行りましたが、あれこそが群集心理を端的に表したものでしょう。この場合は逆もまた真なりで、怖い時ほどみんなで集まりたくなるわけです。「怖いから、みんなで渡ろう赤信号」ということです。

このような心理は、人間の本能に根ざすものです。太古の昔から、個体単位で自衛の手段を持たない弱い動物は、群れになることで危機に対抗して来ました。それに由来することですから、その心理自体は消しようがありません。言うなれば、とても「人間らしい」気持ちでもあります。

弱い動物の動物の群れの中で、補食動物に最初に狙われるのは、群れから離れた個体です。群れの動きについて行けなかったり、はぐれたりした個体から食われて行きます。だから群れを追い、離れないようにすることが、本能的に安心感をもたらします。

その一方で、大きな群れは統制が効かなくなりやすいのです。例えば補食動物に追われた群れが川に向かって突進し、折り重なるように飛び込むことで、泳げる動物でさえ大量に溺死するというようなことも起きます。これが、避難行動中に恐慌状態となった集団が本来の危機回避能力を失うという、本来の意味での「パニック」です。

しかし、自然界では弱い個体である人類は、知性の獲得によって集団の利点を積極的に生かす方法も編み出しました。選抜された強い個体が集団になることで、補食動物や巨大な動物など「敵」の脅威に対抗できるだけでなく、それらを倒してたくさんの食糧を手に入れられるようになりました。さらに、強い集団が仲間の弱い集団を護るという機能を持ったのです。「軍」の誕生です。

これは余談ですが、我々は本能的に強い集団や個体を見分ける能力も持っています。極端に言えば、避難行動中に「防災の専門家」と「屈強な自衛隊員」に出会ったら、どちらについて行きたくなるかというようなことです。それは自衛隊員は、民間人より体力も判断力も優れているはずだという理屈を超えて、主に本能的な判断ということができるでしょう。だから、管理人の理想は「屈強な防災の専門家」なのですがw


さておき、残念ながら災害からの緊急避難時には、そんな頼れる「強い集団」に出会えないのが普通です。そうなると、いきおい「数の多い集団」に依存しがちになります。多くの人が集まっている=多くの人が安全だと考えている、という風に感じるでしょうが、それは前述の通りまさに本能的な感覚です。

そしてその感覚は、「結果的に」正しいことが多いのです。大集団にあまねく危機を及ぼすような大混乱、つまり巨大災害は滅多に起きません。ですから、集団の中に入った時点で、経験的にも「これで大丈夫」という思考停止に陥りがちになります。しかし、状況がある「しきい値」を超えた時、集団の中にいることが、すなわち危険を増幅することになります。

例えば、東日本大震災時の都心部で、駅前に立錐の余地が無いほど人が集まった時に、もう一度あの震度5強が来たとして、そこにいるあなたがいたとしたら、絶対に無事でいられたと思いますか?

周囲のビルからガラスや壁材が降り注ぎ、広い場所に逃げようとしても動けず、一方で建物の中に逃げようとする人波が衝突して人のなだれが起き、自分が動かないでいても無闇に逃げようとする人に突き飛ばされ、踏みつけられる、そしてそんな恐慌が加速度的に拡大して行くという、大パニックが起こる可能性は十分にあったのです。あくまで、「たまたま」それが起きなかったというだけで。

仮に、あなたがそこで起こり得る危険を正確に知っていたとしても、統制の無い集団の中にいると、行動の自由度が著しく制限されます。自分の思った通りの行動などできないと考えなければなりません。

大集団にあまねく危機を及ぼすような巨大災害は滅多に起きないのは確かですが、たった三年前に、我々はそんな巨大災害を目の当たりにしたのです。いや、本当に目の当たりにしたのでしょうか?被災地の方々が見た、経験した本当の恐怖が、被災地以外の我々にどれだけ伝わっているのでしょうか?

想定される首都直下型地震や南海トラフ地震が巨大規模で発生したら、前記のような「最悪の状況」が、各地で多発する可能性が非常に高いと言わざるを得ません。それらの想定被災地での人口、市街、産業等の集積度は、東北地方の比では無いということを忘れてはなりません。

主に東北地方に巨大被害をもたらした東日本大震災からの教訓を十分に検証・分析せずして、さらに重大な被害が予想される、いわゆる「太平洋ベルト地帯」における巨大災害への対策など絵空事だと言っても過言ではないと、管理人は考えます。水だ乾パンだと言っている場合ではないのです。

次回は、震災被災地で起きたことを検証しながら、「群集心理の壁」を乗り越える方法を考えます。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

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