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2019年10月 1日 (火)

台風15号と千葉大停電《その3》(#1382)

2019年9月に関東地方を直撃した台風15号により、関東各地では軒並み観測史上最高やそれに近い風速が観測されました。この台風は、いわゆる『風台風』だったと言えそうです。

そのため、千葉県を中心として電柱の倒壊や倒木による電気設備の損傷などのために広い範囲で停電となり、かなり深刻な状況だったものの、被害の全貌を電力会社や行政が把握するのに『想定外』の時間がかかってしまったのです。


■装備が役に立たない!■
それでも、電力会社は早期の復旧を目指して、台風通過後早い段階から復旧作業を始めました。ところが、損傷が想像以上に酷かったことに加え、『想定外』の障害が行く手を阻みました。道路をふさいだ大量の倒木です。

復旧部隊が被災地へ到達するためには、まずは道路の『啓開』作業が必要でした。通常、災害時にその役を担う中心となるのは国土交通省管轄の道路管理部隊です。2011年の東日本大震災では、東北地方を南北に貫く国道4号線から太平洋側の被災地への道路を短時間で啓開して救援部隊の展開を可能にした、『くしの歯作戦』を成功させました。

しかし今回は勝手が違ったのです。道路を塞ぐのが土砂や瓦礫ならば、パワーショベルやブルドーザーなどの重機を装備した道路啓開部隊が活躍できるのですが、今回の敵は倒木、それもかなり太く長い杉の木が中心です。通常の重機ではなかなか歯が立たないのです。道路を塞いだ倒木に対しては、まずチェーンソーなどで切断したあと、主に人力で移動しなければなりません。大量のチェーンソーとマンパワーが必要ですが、それらをすぐに手当てできる状況ではありません。

倒木を除去するためには、パワーショベルのアームに装着する巨大なカニばさみ状の『グラッパー』というアタッチメントが有効ですが、これは主に建物の解体用などで、通常はあまり装備されていませんから、重機があっても啓開が進まない、という状況も起きました。

このため、電力会社の復旧工事部隊はあちこちで足止めを食ったのです。


■応援が来ない!■
さらに悪いことに、東京方面から千葉県に向かう大動脈である東関東自動車道や東京湾アクアラインが、台風通過後もしばらく通行止めでした。このため千葉県内に向かう一般道は大渋滞となり、管理人が聞いた話では、台風の翌日には東京都内から成田空港まで9時間以上かかったとか。そこからさらに房総半島を南下するためには、どれだけ時間がかかったのでしょうか。

発災数日後には遅ればせながら自衛隊への災害派遣も要請され、電力会社の応援部隊も全国各地から集結してきたものの、効率よく被災地へ進入することはかなわず、広範囲に渡る通信のダウンでその先の状況把握もできない、という状態がしばらく続きました。


■着いたら着いたで■
遅ればせながら自衛隊に災害派遣要請が出され、装備とマンパワーに優れた自衛隊が投入されて、やっとのことで被災地に進入した復旧部隊を待っていたのは、『想定外』の損傷でした。

過去最高レベルの暴風に加えて、幹が空洞化する病害のせいで多発した倒木のせいもあって電柱の倒壊や送電線の切断が酷く、復旧には想定以上の時間がかかることがわかってきたのです。報道で、電力会社が発表する復旧予想日がどんどん伸びていったのが、この頃です。

ここまでの経緯を見ると、被害の内容や規模も含めて『想定外』の連続が早期復旧を阻んだと言えます。


■これは複合災害である■
被災地では、家屋の損傷に加えて電気、水道、通信の途絶が広い範囲で発生しました。そして、状況をさらに過酷にしたのが、酷暑です。

台風通過後の関東地方は、気温が35℃を超えるような日が続きました。その中で電気と水道が途絶することで、熱中症による死者も出てしまいました。そこまで行かなくても、健康を害した人が多発していたはずです。

さらに発災数日後には強い雨も降り、屋根に損傷を受けた家屋では、被害が拡大しました。雨漏りを防ぐブルーシートが不足し、屋根にかけるための作業員も不足しました。屋根などの高所作業には特別な資格が必要で、通常のボランティアは作業できないのです。ボランティア保険でも、高所作業によるケガなどは補償されません。

この台風では、これら諸々の悪条件が複合的に重なることで、通常の台風被害とはかなり異なった被害状況となりました。被害の数字的規模だけ見れば、激甚災害とまでは言えません。しかし、住民にとっては大規模地震などの巨大災害後に匹敵するような、過酷な状況となりました。

そしてそれは、決して今回の被災地だけのことではなく、日本中どこでも起こることなのです。

次回は、改めてこの災害の経緯をまとめて、今後我々が対策するために生かせる教訓を考えて行きます。


■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。

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コメント

幹が空洞になる病気! 言われてしまえばなるほどと思いますが、本当にあれもこれもと重なった気がしますよね。何もこんな一斉に出なくても、とはいうものの、それが災害というものなのかもしれませんね。

>ぼたもちさん

災害の引き起こす要因は、常にどこにも存在しています。それが、ある「しきい値」を超えた圧力を受けると一気に顕在化するわけです。台風15号は、関東地方、特に房総半島方面に対して本当に何十年ぶりかの直撃大型台風であり、その何十年かの間に林業が衰退して山林の手入れが不十分なところへ病気が蔓延していたというのが、被害を拡大した大きな理由です。

他にもいろいろな被害が一気に出てきたのは決して偶然ではなく、この台風の勢力がその「しきい値」を超えていたからであり、この先そういうことの頻度が増して行くのは疑いないのです。

管理人さん、ご無沙汰しております。
実は実家も南房総にあり、台風15号では家は瓦が何枚か飛んで壁に数カ所傷があり、僕の自動車は頭かたチョップされたように凹みました。
街も今でもブルーシートだらけで復興には2年かかるとも言われています。
災害後、少し意識が変わって今までも災害には備えていたつもりなんですが、
さらに強固なものにしようかなと考えていて、今日ソーラーモバイルバッテリーを注文しました。

災害を受け、スマホは便利というものに少し疑問を持ちました。
「電波がしっかりあり、電源もある」上のことだと痛感いたしました。
あの時、電波がなくなり、電源もない状態でしたので、情報を発信しようと思ってもできない状況でした。
1週間後に一応復旧したのですが、、、、、、
一番大事なのは命だと思いました。

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